急激な変化と乱気流の時代にあっては、大きな流れそのものを機会としなければならない。その大きな流れは、ニュー・エコノミーではなく、ネクスト・ソサイエティの到来である。若年人口の減少、労働力人口の多様化、製造業の変身、企業とトップマネジメントの機能・構造・形態の変容である。この局面に応じた戦略なくして成功はありえない。         −P.F.ドラッカー(要約)

2005年03月14日

2005Mar.11 蔵まちえさし活性化セミナーin岩手県江刺市

題目:江刺の長所と今後の課題〜新潟県村上市との比較を通して
主催:江刺商工会議所

江刺 専務  吉川さん  江刺会場
(左:江刺商工会議所専務理事、中:村上の観光カリスマ吉川真嗣氏、右:藻谷氏の講演風景)

1.過去の再開発は今どうなっているか?

全国の再開発で一斉に取り組まれたように、新幹線を通し、道路を拡張するといったことは、お金とブルドーザーさえあれば、どこの街でもできる。急激なスピードで乱開発した地域は、50年も経てば今の徳山(藻谷氏の出身地)のように無機質な街になってしまう。しかし、江刺のようにトロッコを持つ酒蔵など価値ある物を造るのは、大変なことである。

2.江刺と他所の地域経済比較とその理由

↓観光業が伸びる飛騨高山、同規模でまちづくりに挑む村上との地域経済比較。
江刺(人口約34,000人)、村上(人口約37,000人)、高山(人口約67,000人)
        (1985年→2000年のデータより)
江刺…就業者総数が減少。農林漁業と製造業が大幅減少。
サービス業と商業は向上。
村上…就業者数は減少に転じた。商業も製造業も農林漁業も停滞。
    サービス業(含む観光業)が増加し、建設業も増加。
高山…就業者総数が増加を継続。商業も製造業も農林漁業も停滞。
    サービス業が堅調に増加し、次いで建設業が増加。

東京からの交通アクセス
高山−バスで5時間半。電車でも4時間半。
村上−電車で3時間強。新幹線は途中まで。
江刺−電車で2時間10分。
全国的な雇用環境は、東京、大阪、そして名古屋までも軒並み減少。全国でほとんど同じ動きをしている。景気の良さそうな仙台でさえ、商業では売場面積が増えても、小売販売額が落ちている。これは、売場面積を急激に増やしたため、坪効率が一気に悪化、雇用まで減らさないといけない状況まで陥っている。実は、水沢江刺都市圏でも、状況は大同小異。全国がこのような状態。全国展開している大型スーパーでさえ、苦しんでいる時代に、特効薬などない。
このような環境にありながら、交通の便が悪く、山奥にある高山で雇用が増加しているのは何故か?
答は観光産業。全国から物好きが押し寄せていて、不便だからこそ泊まって帰る。飛騨高山の大工の匠は、街をショールームとして全国の神社仏閣を直しに出掛けている。技術では村上はそれ以上で、やはり全国からお呼びが掛かっている。高山の土産物の飛騨牛は、神戸から持ってきた牛を地元の飼料だけで育て、平成元年から始めた商品。観光で地域にお金を落としてもらうために、単価の高い物を…と考えた結果の産物。クール宅急便で全国に発送できるし、荷物にならないので、旅行者は身軽。元々あった資源を活用するだけでなく、新しいものも資源として作ってきた。そのような努力の結果として、観光客が増え、地域経済に潤いが生じている。経済と観光は、非常に関係が深い。

3.日本社会にこれから何が起きるのか?

戦争体験をした世代は、多くの時間を高度経済成長の時代を経験し、これからの日本社会が人口減少社会を理解することができない。中国や東南アジアでさえ、出生率の低下していることを知らない。日本の高度経済成長は、景気が良かったからでなく、人口が増えた結果として、そうなったに過ぎない。住宅で言えば、出生率が高く実家を相続ができない世代が溢れたから。だから今後景気が良くなったとしても、人口は減少しているから、家は余る一方となる。20年後、今の50代が70代になるのは、避けられない事実。少子化問題とは、全く関係ない。江刺について言うと、次のようになる。

       2000→2020年(全国)  2000→2020年(江刺市) 2000→2020年(首都圏)
 70歳以上 +1,166万人(+78%)  +800人(+12%)  +319万人(2.2倍)
 20~59歳  −961万人(−14%)   −2,600人(−15%)  −153万人(−9%)
 15~34歳  −953万人(−28%)   −1,700人(−26%) −250万人(−28%)

4.高齢化した先進国で何が起きているか?

観光産業というのは、場合によっては工場の10倍以上の一次雇用を生み出す産業である。高山のように交通が不便なところでは、泊まらないといけないので、旅館業が活気付く。宿泊を伴うと、飲食が増え、土産が売れ、クリーニングが忙しくなるというように、サービス業が勢いづく。飲食に地元産のものを使えば、一次産業が潤う。しかも、観光産業は、他の産業では難しい高齢者の雇用が可能になる。
実際に、人件費が高くなった人材を雇用するために、高齢化社会の先進国では、次の4つの産業が主要となっている。

・金融(欧州では田舎町にもたくさんの銀行がある)
・農業・加工食品(欧州のワインやチーズ。日本では酒や焼酎、漬物)
・ハイテク産業
・観光 ←先進諸国では、どこも必ず地域の魅力と表裏一体!

日本でもこの4つの産業が栄えるが、観光分野は中でも遅れている。ただ、江刺も村上も既に観光に力を入れているので、他よりも有利である。

5.江刺と村上 それぞれの長所と課題

   江刺の特徴                   村上の不利な点
蔵の多くを市民が救い、裏路地を残した。 街路整備の可能性が消えていない
話題となる歴史の舞台である。       全国的に有名な歴史や有名人はいない。
まちづくりをする企業やNPOがある。   有志の運動で行政や会議所の協力が弱い。
大きな資金をまちづくり関係者が投資。  大きな資金の取り組みは始まったところ。
蔵の町並みという外観が残っている。   外見は中途半端な近代化で良さが見えない。
交通アクセスがよく大都市に近い。     新幹線の駅から1時間以上。大都市が遠い。

   江刺の不利な点                村上の特徴
知名度が低い。                 マスコミの活用が上手く全国的に認知される。
蔵の価値を理解する市民が少ない。    観光の経済効果と経済外効果が市民に浸透。
蔵再生を行う職人が域内にいるか?    村上大工が町屋補修技術を伝承している。
県、国、JR、景観専門家などの認知は?  内外に広く認知され、応援団を持つ。
地場産業の連携が弱い。           温泉など地場産業との連携が密接。
地域有力者の理解は本物か?        地域有力者は皆、町屋の価値を理解。

江刺・村上ともに、味のある本当の日本建築を保有し、贅沢な食文化を持ち、商人町の魂を残している地域。
そして何より、都会よりもずっと活力にあふれた地域リーダーがいて、若者の取り組みがある。

江刺の街並み  江刺 集合写真  
(左:江刺の街並み、右:村上と江刺でまちづくりに貢献する人々)

  江刺 作業前  江刺 作業後
(左:村上の黒塀に学んで皆で作ることに、右:仕上がり後(黒板の裏には手伝った人の記名を))

CIMG2572.JPG  CIMG2573.JPG  CIMG2574.JPG
(街中にこんな贅沢な空間を持つ飲食店が!「横屋」)
posted by ComPus 地域経営支援ネットワーク at 07:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 地域レポート | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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